クリスマス特集2019:その13「賢者の贈り物」のお話し [キリスト教と読書]

今年もこのブログに「クリスマス特集」を掲載する季節になりました。数年前からこの時期の恒例となっていますが、昨年の掲載記事を一部加筆・修正して今年も掲載させていただきます。今日は、その13「賢者の贈り物」のお話しです。
この「賢者の贈り物」は、オー・ヘンリー(本名:ウィリアム・シドニー・ポーター:アメリカ:1862年~1910年)の短編小説です。小説家で主に短編小説を得意とし、381編の作品を残しています。市民の哀歓を描き出した短編が多く、短編の名手と呼ばれています。映画化されたものも少なくありません。

「12月24日のクリスマス・イヴのこと。
アメリカにヤングという若い夫婦がいました。
夫の名はジェイムズ、妻は彼のことをジムと呼んでいました。
妻の名はデラ。
ジムは貧しいサラリーマンでした。
しかも、ヤング夫妻が迎えたその年は特別に景気が悪く、給料も減ってしまいました。
二人はいつもより厳しいクリスマスを迎えなければなりませんでした。
それでも、デラは、このクリスマス・イヴを、なんとか楽しく過ごしたいと思っていました。
そして愛する夫のために何かすばらしいプレゼントを買いたいと思いましたが、1ドル87セントしかありません。
何度数え直しても、1ドル87セント。これでは何も買えません。
デラの目から涙が出て来ました。
しかし、デラが姿見の前に立ちお化粧を直していたとき、すばらしいことを思いつきました。
デラには膝の下までとどく美しい髪の毛があったのです。
すぐにその長い髪の毛はある品物に変っていました。
それは、ジムが大切にしている金の懐中時計に付ける「プラチナの鎖」でした。
一方、ジムも愛する妻・デラのために何かすばらしいプレゼントをしようと考えていました。
でもお金がありません。
ジムは、祖父と父から受け継いだ大切な金の懐中時計を質に入れ、デラが欲しがっていた「鼈甲の櫛」を買いました。
デラは、ジムにプレゼントする「プラチナの時計鎖」を用意し、ジムの帰りを待っていました。
ジムは定刻通りにアパートに帰って来ました。
しかし、扉を開いたジムは、デラの顔を見て、棒立ちになってしまいました。
デラのあの美しい髪の毛が無くなっていたからです。
でもそれだけではありません。
髪の毛を売って買った「プラチナの鎖」をつけるはずの、ジムの金時計もなくなっていたのです。
ジムが金時計を売って、デラの髪に飾ろうとした「鼈甲の櫛」。デラが自分の髪を売って買った「プラチナの鎖」。
どちらもムダにになってしまいました。
デラの美しい髪の毛はなく、ジムの金時計もないからです。
しかし、彼らはお互いの「思いやり」を受け取りました。
自分の一番大切にしていたものを犠牲にしてまで、愛する者を喜ばせようとした、その「思いやりの心」を互いに受け取ったのです。
彼らはその二つのプレゼントを机の引き出しにそっとしまったということです。」

作者のオー・ヘンリーは最後にこう言っています。「現代の賢者たちに言おう。贈りものをする人々の中で、この二人こそ「賢い人々」であったのだと。 贈りものを与え、贈りものを受けとる人々のなかで、彼ら二人のごとき者こそが「最も賢き人々」であるのだと。
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