『一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ≪聖マタイの召命≫』のご紹介 [キリスト教と読書]

一昨日、職場の大学構内にある書店で本書を見つけて購入し、昨日の午前中で読み終わりました。いつもは通勤電車読書ですから、久しぶりに集中して読書しました。筑摩書房のホームページの本書の紹介には、「名画ながら謎の多い《聖マタイの召命》。この絵を様々な角度から丁寧に読み解いてみる。たった1枚の絵画からあふれて尽きぬ豊かなメッセージを受け取る。」としか書いてありません。まず、本書の説明の前に画家のカラヴァッジョをご紹介しておきましょう!カラヴァッジョは、正式にはミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(イタリア:1571年~1610年)といいます。バロック期のイタリア人画家で、ルネサンス期の後に登場し、カラヴァッジョ(Caravaggio)という通称で広く知られ、1593年から1610年にかけて、ローマ、ナポリ、マルタ、シチリアで活動しました。

カラヴァッジョ作の「聖マタイの召命」です。本書でも取り上げていますが、右端のイエス・キリスト(手前のペトロで半分隠れています)が、まさに召命しょうとマタイを指差しているのですが、それが中央付近にいるヒゲをたくわえた人物なのか?、一番左端にいてテーブルに座ってお金の勘定をしている若い人物なのか?議論の的になっています。
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カラヴァッジョの作品の特徴は、大きくは次の2つです。それは①実際の映像のように人間の姿を写実的に描く手法と、②光と陰の明暗を明確に分ける表現ですね。バロック絵画の形成に大きな影響を与えています。本書の中でも述べられていますが、「カラヴァッジョの革新性はなによりも、美術においてはじめて写実主義・自然主義を確立し、身近な静物を触れられそうなほど本物そっくりに描き、聖書の物語を日常で起こりうる現実のドラマとして表現したことにありました。」と、従来の画家と違うその特異性があります。ただ、カラヴァッジョ本人は、聖書の物語を鋭く追究して表現する画家であったにもかかわらず、粗暴な性格で何かと罪を犯して警察にお世話になり、しばしば投獄されて刑務所の常連だったそうです。苦しい逃亡生活をしながらも宗教画を描き続けて、38歳で波乱万丈の人生を終えました。
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この新書本は、「あとがき」に書いてあるとおり、著者は30年以上もカラヴァッジョ研究に携わっていますが、「高校生レベルの読者に、カラヴァッジョ作品を読むおもしろさや魅力を伝えようと書いたものです。」とあるとおり、気軽に読めるいわば「カラヴァッジョ作品入門書」といったところでしょうか。美術の専門書ではありませんので、作者も作品も何も知らなくても気軽に読めます。また、本書の終わりにカラヴァッジョ作品などについての「読書案内」も掲載されていますからご参考にしてください。なお、本書のテーマとなっているカラヴァッジョの作品≪聖マタイの召命≫は、このブログの2019年9月21日に掲載した「聖マタイ使徒福音記者のお話し」に書いてありますので、まずそちらをお読みください。次のアドレスをクリックしてくださいね。https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2019-09-21

他にも、このブログに掲載したカラヴァッジョ作品は、『ロザリオの聖母』、『聖ペテロの磔刑』、『聖カテリナ』、『ホロフェルネスの首を斬るユディト』や『エマオの晩餐』です。それぞれのテーマとなっている記事に掲載いたしました。どの作品も光が当たっている部分とそうでない部分の明暗がはっきりし過ぎているため、どの作品も全体的に暗い感じがしますね。私の大好きな絵画作家の一人です。
私は、「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」が、2016年3月1日~6月12日まで国立西洋美術館で開催された時、女房殿に誘われたのですが、なぜかその時は私は行かなかったのです(; ̄O ̄)行った女房から、お土産に『エマオの晩餐』のファイルケースをもらったのを覚えていますというか、今も使っていますが。 行けばよかったのに………大後悔(⌒-⌒; )

画題となった「聖マタイの召命」のことが、新約聖書の3福音書に記載されていますので、記載箇所を掲載しておきます。いずれも『聖書協会共同訳聖書』からです。
◯新約聖書:マタイによる福音書・第9章・第9節
「イエスは、そこから進んで行き、マタイと言う人が収税所に座っているのを見て、「私に従いなさい」と言われた。彼は立ち上がってイエスに従った。」
◯新約聖書:マルコによる福音書・第2章・第14節
「そして通りがかりに、アルファイの子レビが収税所に座っているのを見て、「私に従いなさい」と言われた。彼は立ち上がってイエスに従った。」
◯新約聖書:ルカによる福音書・第5章・第27〜第28節
「その後、イエスは出て行き、レビと言う徴税人が収税所に座っているのを見て、「私に従いなさい」と言われた。彼は何もかも捨てて立ち上がり、イエスに従った。」

☆書名:『一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ≪聖マタイの召命≫』
著者名:宮下規久朗
出版社:筑摩書房(ちくまプリマー新書345)
発行日:2020年2月10日
定価格:950円+税
☆著者紹介
宮下 規久朗(みやした きくろう)
1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。美術史家。2005年『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞などを受賞。ほかに、『モチーフで読む美術史』、『しぐさで読む美術史』(ちくま文庫)、『カラヴァッジョへの旅』(角川選書)、『刺青とヌードの美術史』(NHK選書)、『食べる西洋美術史』、『ウォーホルの芸術』、『美術の力』(光文社新書)、『闇の美術史 カラヴァッジョの水脈』、『聖と俗 分断と架橋の美術史』(岩波書店)、『そのとき、西洋では』(小学館)など多数の著作があります。
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