イーディス・ルイーザ・キャヴェルのことば [キリスト者(クリスチャン)]

「愛国心だけでは十分ではありません。私は誰に対しても一切恨みや憎しみは抱いていないのです。」

イーディス・ルイーザ・キャヴェル(イギリス:1865年~1915年)は、第一次世界大戦時に活躍した有名な看護師です。ベルギーにおける近代看護の先駆者として、存命中からすでに知られる存在でした。エディス・キャベルなどと表記されることもあります。4人兄妹の長女として生まれ、学校を卒業後は、ベルギーのブリュッセルで家庭教師(ガヴァネス)として働いていました。父の介護に従事することがきっかけとなって、看護職の道を歩むことになりました。ちなみに、キャヴェルはイングランド国教会のクリスチャンです。

1896年に30歳で王立ロンドン病院の看護師だったエヴァ・ラッケスの元で看護師としての勉強を始め、イギリスの様々な病院で看護師として働くようになりました。その後、自立して個人看護師とし働き、1907年、それまでの実績が評価され、ブリュッセルに設立されたベルギー看護学校に42歳で看護の教師としてとして招聘されました。6年間で約400人の生徒(看護師)を送り出したそうです。

第一次世界大戦時、敵味方の兵士の命を差別なく救い、約200人以上の連合国軍兵士がドイツ占領下のベルギーから脱出するのに尽力しました。そのためドイツ軍に捕らえられ、軍事法廷で反逆罪の有罪判決を受け、死刑を宣告されました。赦免のための国際的な圧力があったにもかかわらず、ドイツ軍によって1915年10月12日に射殺されました。彼女の処刑は世界中に報道され、国際的な非難を受けました。

キャヴェルはイングランド国教会(聖公会)の篤い信徒で、その信念に従って、助けを必要とするすべての人々、ドイツ、連合国の両陣営の兵士に救いの手を差し伸べました。ナイチンゲールの事績に「敵味方の区別なく」という表現が使われますが、それはナイチンゲールではなく、キャヴェルのことだそうです。「助けを必要とする命がある限り、私は働き続ける。(I can’t stop while there are lives to be saved.)」という彼女の言葉が知られています。イングランド国教会は、彼女を列聖して聖人暦の10月12日を聖人としています。

ロンドンのトラファルガー広場にイーディス・キャヴェル記念碑があり、そこには「愛国心だけでは十分ではありません。私は誰に対しても一切恨みや憎しみは抱いていないのです」という死刑執行前夜の彼女の言葉が刻まれています。死を目前にしたキャヴェルの言葉ですが、自分の生まれ育った国だけでなく、どこの国の人々であっても、困っているのを見過ごすことなく救済するという崇高な使命を感じます。そして、イエス・キリストの説く「赦し」をです。赦すところに平安があるのです。キャヴェルは、すべての人を赦して帰天したのですね。
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