『メキシコ麻薬戦争― アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱―』のご紹介 [日記]

緊急事態宣言が3月7日まで延長され、引き続き「不要不急の外出は避けること」に象徴されるように、人がいるところはなるべく避け、私の標語「コロナに感染しない。感染させない。」を肝に銘じ、仕事で大学、ミサで教会へ行く以外は自宅で過ごすようにしています。
そこで、家にたくさんあった<積読>は、すべて読み終わりましたので、読書生活を継続するに当たって新しいジャンルの本を読もうと、以前に観た映画『ボーダーライン(アメリカの対メキシコ麻薬戦争を描いた映画)』に関係する本を読んでいます。<積読>の中にあった『エクソダス―アメリカ国境の狂気と祈り―』を読み、それに関係する『マラス―暴力に支配される少年たち―』を読んだ結果、根本的にメキシコにおける麻薬戦争とはどういうものなのか?その全体像を把握するため、ずばりこのタイトルの本を選んだわけです。
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この本の内容は、出版社の現代企画室のホームページに書かれている本書の案内文を引用させていただくと、「グローバル化社会の影にひそむ不条理な日常:米国人のあくなき需要を満たすため、米墨国境を越える末端価格300億ドルもの麻薬。幾重にも張りめぐらされた密輸人のネットワーク。警察と癒着したカルテル間の抗争とおびただしい死者。軍隊並みの装備で国家権力に対抗するパラミリタリー。麻薬王たちの豪奢な暮らし。10 代で「殺し屋」となり、たった85ドルで殺人を請け負う少年たち……
メキシコとアメリカの歴史的な関係を背景に、近年のグローバル化と新自由主義の進展のひずみの中で急拡大した「メキシコ麻薬戦争」の内実を、綿密な調査に基づき明らかにするルポルタージュ。米墨国境地帯で麻薬取引と暴力に依存して生きる「ナルコ(麻薬密輸人)」たちに密着し、犯罪者たちの生活や文化、彼らを取り巻く凄惨な暴力の実態を明らかにすると同時に、世界各地で注目されている「麻薬合法化」の議論など、問題解決に向けた方向性も指し示す。」ということです。

メキシコにおける麻薬密輸の歴史的事実から、麻薬戦争に至るまでの経緯、現状の問題や世論、把握しにくい各種データ(その多くは推測)など、危険な取材を敢行してのルポタージュとなっています。なんということか!政治家も行政も警察も麻薬カルテルと癒着しており、メキシコ国民の皆さんには申し訳ございませんが、国家自治機能を喪失しているのではないかと思えるような内容です。昨年の10月15日、メキシコのサルバドル・シエンフエゴス前国防大臣(72)が、アメリカ・ロサンゼルス空港に到着するなりアメリカ麻薬取締局(DEA)に拘束されたというニュースは、メキシコのみならず、「リアル・ゴッドファーザーの世界」と世界的に驚かせました。その後、メキシコに引き渡されたようですが、容疑は麻薬カルテルと癒着し、麻薬取引きを仕切っていたトップだったとのことでした。国の国防大臣が麻薬取引きを仕切っていたという、日本では絶対に考えられない、理解できないことがメキシコでは行われているということです。死者の数は地域紛争国よりも多いのではないかと思います。

書名:『メキシコ麻薬戦争― アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱―』
著者:ヨアン・グリロ
2001年より、『タイム』誌、CNN、AP通信、PBS News Hour、『ヒューストン・クロニクル』紙、CBC、『サンディ・テレグラフ』紙など国際メディアに、ラテンアメリカに関する報道を行ってきた。軍事作戦、マフィアによる殺人、コカイン押収などについて報道し、麻薬戦争について2人のメキシコ大統領、3人の司法長官、アメリカ合衆国大使らと議論した。イギリス出身、メキシコシティ在住。本書は彼の最初の著書である。
本書は、オーウェル賞にノミネートされ、ロサンゼルスタイムズ・ブックフェスティバルで最終選考に残り、BBCラジオ4の「今週の本」に選ばれた。

訳者:山本 昭代(ヤマモト アキヨ)
兵庫県出身。大学卒業後、出版社勤務、フリー編集者を経て、1994年から3年間メキシコに留学、1997年社会人類学高等調査研究センター(CIESAS、メキシコ市)修士課程修了。2005年東京外国語大学地域文化研究科博士課程修了、博士(学術)。現在、慶應義塾大学ほか非常勤講師。
著書に、『メキシコ・ワステカ先住民農村のジェンダーと社会変化―フェミニスト人類学の視座』(明石書店)などがある。
新書)、『ルポ 雇用なしで生きる』(岩波書店)などがある。
出版:現代企画室
発行:2014年3月7日
定価:2,200円(税別)

◯目次
第1章|ゴースト―イントロダクション
PARTⅠ 歴史
第2章|ケシ―麻薬生産の黎明期
第3章|ヒッピー―第一次麻薬ブーム
第4章|カルテル―メキシコ麻薬組織の形成
第5章|麻薬王たち―三大カルテルの時代
第6章|政権移行―高まる戦争の足音
第7章|戦国時代―カルデロンの「麻薬戦争」
PARTⅡ 内臓
第8章|運び屋―麻薬戦争とマネー・ロンダリング
第9章|殺し屋―殺人という仕事
第10章|文化―マフィアの音楽・映画
第11章|信仰―ギャングの宗教
第12章|犯罪的蜂起―体制に挑む暴力
PARTⅢ 運命
第13章|捜査―スパイと裏切り
第14章|拡大―国際化する組織犯罪
第15章|多様化―犯罪の多角化
第16章|平和―麻薬戦争終結への道
謝辞
参照文献
訳者あとがき
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「聖スコラスチカおとめ」のお話し [聖人・福者・尊者]

今日 2月10日は、「聖スコラスチカおとめ」の祝日です。聖スコラスチカ(イラリア:480年ごろ~542年ごろ)は、イタリア中部のヌルシアの裕福な信仰深い家に生まれ、ヨーロッパの修道院制を確立して「修道生活の父」と呼ばれる聖ベネディクトの妹です。
生後まもなく母を亡くし、父と兄によって育てられました。兄(聖ベネディクト)が山にこもって修道生活を始めると、スコラスチカも修道生活を送り、神に生涯をささげたいと望むようになりました。やがて兄が創設したモンテ・カッシーノ修道院の近くに家を建て、祈りと労働の生活を始めたところ、彼女のところに「祈りと労働に専念する生活をしたい。」と願う女性達が集まり、その家は修道院となって彼女は院長として会員たちを導きました。
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当時、ベネディクト会修道院には異性が入ることはできなかったので、兄妹は年に1度、修道院の中間にある農家で出会い、神、祈りそして修道生活について語りあったそうです。死期が近づいたことを感じたスコラスチカは、兄ともっと神について語り明かしたいと思ったところ、彼女の切なる祈りが嵐を起こし、帰ろうとする兄の足を引きとめたといわれています。その3日後、彼女は息を引き取り天に召され、兄は妹の魂が白い鳩のように昇天していくのを見たそうです。兄妹はモンテ・カッシーノにある同じ墓に眠っています。

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