「聖トマス使徒」のお話し [聖人・福者・尊者]

「私の主、私の神よ」

この言葉は、聖トマス(トマ)の言葉です。
今日7月3日は「聖トマス使徒」の祝祭日です。聖トマスは、イエス・キリストの十二使徒(弟子)の一人で、もちろんカトリック教会では聖人に列っせられています。イエス・キリストが復活して天に昇られた後、使徒たちの前に最初に現れた時にトマスだけがいませんでした。イエス・キリストの復活を自分の目で見なかったため、ほかの弟子たちの言葉を信じませんでした。しかし、2回目に使徒たちの前に現われた時、自分の前にいるイエス・キリストの脇腹の槍傷を触って、初めて復活したイエス・キリストを信じたと聖書には書かれています。このことから、現在に至るまで「不信のトマス」「懐疑のトマス」ともいわれ、欧米では何事も自分で観て確認しないと信じないような疑い深い人のことを『疑い深いトマス』と呼ぶようになりました。
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フランス(ロレーヌ公国)の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作の『聖トマス』です。1878年~1879年に描かれました。現在は東京都上野にある国立西洋美術館い所蔵されています。トゥールは、ルイ13世の国王付き画家でしたが、亡くなった後に忘れ去られ、その作品は別の画家の作品と間違われたり、作者不詳として保管されていました。ところが、1915年に美術史家ヘルマン・フォスが再発見し、現在では高い評価を受けています。ただ、真作は40数点しか確認されていません。
この『聖トマス』は、フランスのアルビの大聖堂に長く保管され、1987年にその存在が世に知られるようになりました。この作品で聖トマスが槍を持っているのは、最期に槍で突き刺されて殉教したというエピソードのためです。ですから、聖トマスの絵を描く場合は、槍がアトリビュートになっています。

次の聖句(イエス・キリストの言葉)は、イエス・キリストが十字架に磔(はりつけ)となり、死んで3日目に復活し、その後2回にわたって弟子たちの前に現れた情景が書かれています。十字架に磔(はりつけ)になった時、両手・両足にそれぞれ釘を打ち込まれ、脇腹を槍で突かれました。ですからその傷跡っが残っているのですね。
◯新約聖書:ヨハネによる福音書・第20章・第24~第29節
「十二人の一人、ディディモと呼ばれるトマスは、イエスがおいでになったとき、彼らとともにいなかった。そこで、ほかの弟子たちが『わたしたちは主を見た』と言うと、トマスは言った、『わたしはその手に釘の跡を見、自分の指を釘の跡に入れてみなければ、また、自分の手をその脇腹に入れてみなければ、決して信じない』。
さて八日の後、弟子たちはまた家の中におり、トマスも彼らとともにいた。戸にはみな鍵がかけてあったのに、イエスがおいでになって、真ん中に立って仰せになった、『あなた方に平和があるように』。それから、トマスに仰せになった、『あなたの指をここにあてて、わたしの手を調べなさい。あなたの手を伸ばして、わたしの脇腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。』トマスは答えて言った、『わたしの主、わたしの神よ』
イエスはトマスに仰せになった、『あなたは、わたしを見たから信じたのか。見ないで信じる人は幸いである。』」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から

【アトリビュート】
西洋絵画、特に宗教画(キリスト教絵画)には、「アトリビュート(=持物:じぶつ)」というものがあります。これは、絵を描く時の“約束事”として、特定の人物(聖人など)に密接に結びつけられたもの、例えば花、動物、小物、道具や背景などが画かれるのです。
例えば、聖母マリア様ですと、必ず画かれているのが純潔の象徴である「百合の花」ですね。「受胎告知」の絵で、大天使ガブリエルが百合の花を持っています。そして、天の真実を意味する「青色(濃紺色)のマント」です。「祈りの聖母」と「悲しみの聖母」の絵もそうですね。他にも、「12の星の冠」や足の下に「三日月」と「蛇」が画かれています。聖母マリア様の絵を見るときはよく観察しましょうね。
他にも、聖母マリアの夫である聖ヨセフは、大工であったことから大工道具がアトリビュートになっていますし、聖アガタは、乳房を切り取られたことから、乳房がアトリビュートになっています。旧約聖書の「トビト記」に出てくるトビアスを描いた絵は、必ず魚が画かれています。(「トビト記」を読めばわかります。)マグダラのマリアの絵は、必ず香油の壺とドクロが画かれています。
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