「十字架のアンティーク・ペンダントトップ」のお話し [聖品紹介]

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フランス製の十字架のアンティーク・ペンダントトップです。フランスのどこで、いつ造られたかは分かりませんが、私のお気に入りです。もちろん神父様に祝福していただきました。十字架にイエス様のお身体があるのは、いかにもカトリック教会の信徒らしいですよね。カトリック教会の十字架には、十字架の大小を問わず必ずイエス様のお体があります。
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この十字架は、シルバー製品で最上部のカンを通す丸い輪の部分に刻印があります。そして、もう一つ「いのししの頭」の刻印があります。この刻印は、フランスではシルバーのジュエリーには、もっともよく押される刻印だそうです。ちなみに、サイズはタテ約7.0㎝×ヨコ約4.5㎝、カン含んだサイズは、タテ約7.4㎝×ヨコ約4.5㎝です。重さは約6.1gです。

【フランスの刻印(ホールマーク)制度】
フランスは、世界で最も長いジュエリーの歴史をもつ国の一つです。フランスの刻印制度は、イギリスと並び世界で最も早く制度が作られました。刻印は、製品・用途によって鷲の頭、馬の頭、犬の頭などなどいろいろあります。金の刻印だけでもフランス国内用に作られたゴールド製品の押される刻印、輸出用ゴールド製品に押される刻印、輸入金製品に押される刻印等いくつもあります。すべてを網羅するのはプロでも難しいそうですが、アンティークジュエリーで使われる刻印はある程度は決まっているそうです。しかし、小さ過ぎて見えません!見る(確認する)時は、宝石用(鑑定用)ルーペを使うそうです。

フランスの刻印は、昔も今も国によって厳しく管理されていますので「金位や貴金属の区分」に関しては、刻印を正確に読み取ればまがい品をつかむことはまずありえないそうです。ただし、刻印で読み取れるにはフランスのアンティークジュエリーの場合、貴金属の種類と金位、製造国が主で、必ずしもアンティークの真偽を保証するものではないことも多いそうです。(イギリスの場合は、製造年や具体的な地域までが刻印で読み取れる場合が多いそうです)分からない刻印を調べたいときは、分厚いフランスの専門書で調べるとほとんどすべてが明らかになるそうです。要は、鑑定書替わりみたいなものなのです。

ところで、この十字架のペンダントトップですが、十字架の四つの先端に「フルール・ド・リス(仏: fleur-de-lis もしくは fleur-de-lys)」が付いています。これは、アヤメ(アイリス)の花を様式化した意匠を指します。特に紋章の場合は政治的、王権的、芸術的、表象的、象徴的な意味をも持ますが、現代においても、フランスに関わる政治的・表象的・象徴的意味合いが強いようです。
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fleur-de-lis の直訳は「ユリの花」ですが、ここに言う「ユリ」は一般的な「ユリ」(ユリ科ユリ属)ではなく、ユリ目に属するとされたアヤメ科アヤメ属のキショウブ(Iris pseudacorus)やニオイイリス(Iris florentina)といった花を指すとされています。カトリック教会では、ユリの花が聖母マリア様のアトリビュートになっていますので、この形を見ればユリの花と見ます。

ヨーロッパの国や貴族の紋章や旗に、何世紀にもわたり数多く見られますが、歴史的には特にフランス王家と関係が深く、またブルボン家の一員であるスペイン王家やルクセンブルク大公家も現在でも紋章に使用し続けています。フルール・ド・リスはフランスの切手などにも使用される継続的なフランスの象徴ですが、共和国としてのフランスはフルール・ド・リスを公式に採用していません。

現在のフランス共和国・パリ大学の紋章です。フルール・ド・リスが描かれています。
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中世、ユリの図像とフルール・ド・リスは、宗教芸術の分野では重なる部分が多いです。歴史家のミシェル・パストローによれば、1300年頃までユリはイエス・キリストを象徴していましたが、次第に聖母マリアのシンボルへと変化して、聖母マリアに言及したソロモンの雅歌「lilium inter spinas」(いばらのユリ)と関連付けられるようになったそうです。 他の聖書中の聖句や宗教文学の中で、ユリが純潔と貞節を象徴するとされたことも、この花が図像学上、聖母マリアのアトリビュートとして確立されるのを助けたそうです。また、紋章の3枚の花びらの意匠は、「三位一体」反映しているそうです。

【アトリビュート】
西洋絵画、特に宗教画(キリスト教絵画)には、「アトリビュート(=持物:じぶつ)」というものがあります。これは、絵を描く時の“約束事”として、特定の人物(聖人など)に密接に結びつけられたもの、例えば花、動物、小物、道具や背景などが画かれるのです。
例えば、聖母マリア様ですと、必ず画かれているのが純潔の象徴である「百合の花」ですね。「受胎告知」の絵で、大天使ガブリエルが百合の花を持っています。そして、天の真実を意味する「青色(濃紺色)のマント」です。「祈りの聖母」と「悲しみの聖母」の絵もそうですね。他にも、「12の星の冠」や足の下に「三日月」と「蛇」が画かれています。聖母マリア様の絵を見るときはよく観察しましょうね。
他にも、聖母マリアの夫である聖ヨセフは、大工であったことから大工道具がアトリビュートになっていますし、聖アガタは、乳房を切り取られたことから、乳房がアトリビュートになっています。旧約聖書の「トビト記」に出てくるトビアスを描いた絵は、必ず魚が画かれています。(「トビト記」を読めばわかります。)マグダラのマリアの絵は、必ず香油の壺とドクロが画かれています。
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