「INRI」のお話し [キリスト教関係事項・用語等]

このブログに過去に掲載した記事を再掲載いたします。
◯写真は、自宅の自室にある祭壇上の十字架で、イタリアのレーピ社から日本の貿易会社を経て取り寄せました。高さは50㎝ほどあります。ちなみに、イエス様の体は木彫りです。なお、キリスト教カトリック教会の聖堂にある十字架は、イエス・キリストの身体がついていますが、キリスト教プロテスタント教会の聖堂にある十字架は、十字架そのままで、イエス・キリストの身体はついていません。
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写真のように、イエス・キリストの身体がついた十字架の上部には、必ず「INRI」と書いた板があります。「INRI」とは、ラテン語の「IESUS NAZARENUS REX IUDAEORUM」の頭文字で、日本語訳すると「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」となります。これは、イエス・キリストの十字架の磔刑(たっけい:十字架に磔(はりつけ)にする刑罰)において、十字架の上に掲げられた「罪状書き(イエスが自らを神の子でありユダヤ人の王であると称し、神を冒涜したとの罪状)」です。
このため、磔刑を描いた絵画や、十字架の上のイエス・キリストを彫った磔刑像では、イエス・キリストの頭上に「INRI」という頭文字が記された(略した)札・銘板が、必ず描かれています。古代の磔刑は、処刑場に引かれてゆく罪人の首に罪状を書いた銘板がぶら下げられ、その銘板は磔刑時に十字架上にかけられていたそうです。ヨーロッパにおけるルネサンス美術では、このうちラテン語の罪状書きのみが描かれるようになり、単に「INRI」と略して描かれるようになったそうです。

◯次の絵は、ルーベンスの作品『キリストの昇架』です。ピーテル・パウル・ルーベンス(オランダ:1577年~1640年)は、バロック期のフランドルの画家で外交官です。見えにくいですが、この絵にはきちんと罪状がヘブライ語、ラテン語、ギリシア語で書かれており、「IESUS NAZARENUS REX IUDAEORUM」も描かれています。
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◯次の絵もルーベンスの作品で『キリストの磔刑』です。この絵もきちんと罪状書きが描かれていますね。右下の黒いマントを着た悲しみのあまり今にも崩れ落ちそうな女性は、聖母マリアさまです。その身体を支えている赤いマントを着た男性は使徒のヨハネです。
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「IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM(ユダヤ人の王、ナザレのイエス)」という言葉は、新約聖書の「ヨハネによる福音書」第19章・第19節に登場します。他の3つの福音書は表現が少し異なり、マタイによる福音書の第27章・第37節では「これはユダヤ人の王イエスである」、マルコによる福音書の第15章・第26節では「ユダヤ人の王」、ルカによる福音書の第23章・第38節では「これはユダヤ人の王」となっています。ヨハネによる福音書は、掲げられた状況を説明しています。
◯新約聖書:ヨハネによる福音書・第19章・第19節~第20節
「ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上につけさせた。それには、「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」と書いてあった。イエスが十字架につけられた場所は町に近かったので、ユダヤ人の多くがこの罪状札を読んだ。それは、ヘブライ語、ラテン語、ギリシア語で書かれていた。」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から
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