新約聖書:ローマの人々への手紙・第13章・第13〜第14節 [聖書]

「酒盛りで大騒ぎをしたり、酔いつぶれたり、みだらな行いに耽ったり、身を持ち崩したり、争ったり、妬んだりすることなく、日中を歩くように、慎み深く生活しましょう。主イエス・キリストを身にまといなさい。欲望をかなえさせようと、肉のために心を煩わせてはなりません。」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から

この聖句(聖書の言葉)は、死後に聖人に列せられ、「教父(きょうふ)」と「教会博士」という称号を贈られた聖アウグスティヌスが洗礼を受ける要因となった聖書の部分です。洗礼を受ける前年の386年、ミラノの自宅で横たわって休んでいる時、隣家の庭で子ども達の遊ぶ声の中から「Tolle, lege(とって読め)」という声を聞き、近くにあった聖書を取ると、この部分が書かれているページが開かれており、そこを読んで回心したそうです。聖アウグスティヌスは、若いころ放蕩の限りを尽くし、ある女性と同棲して乱れた生活を送っていました。私は、恐れ多くも「アウグスティヌス」を洗礼名にしてしまいました!( ̄▽ ̄;)

欲望のままに生きることなく、人への邪な思いや余計な思いを捨て、主であるイエス・キリストの教えにしたがって生きなさいと説いています。ここに「肉」とありますが、これは「身体(からだ)」のことを指していますが、つまり、“肉欲(にくよく)=性欲”のことを意味しています。性的欲望・異性への邪な情欲などに負けてはならないのです。これは信仰においてとても大切なことなのです。
私のような凡人にとっては、「欲の誘惑」は生きている証(あかし)であり課題ですね。欲が過ぎれば心が乱れ、言動や行動が乱れ、生活が乱れ、やがて人間がダメになってしまいます。仏教では「煩悩(ぼんのう)」の一つです。欲の誘惑=煩悩ですね。この煩悩を断ち切ることが、主であるイエス・キリストを身にまとうこと = イエス・キリストの教え・行いと一致することになるのですね。

話しは変わりますが、戦国時代、織田信長と徳川家康の連合軍は、「長篠の戦い」において、当時最強といわれた武田勝頼の騎馬軍団を破ります。その後、織田信長の軍勢は武田家の居城のある甲斐の国(現在の山梨県)に攻め入り、武田家を滅ぼしてしまうのですが、その際に武田家の菩提寺である恵林寺(臨済宗妙心寺派)に火を放ちました。燃え盛る恵林寺の楼上で快川紹喜(かいせん しょうき)和尚は、若い修行僧に次の句をもって励まし焼死しました。私は、居合道の修行に励んでいた時に学びました。

原文
「安禅不必須山水 滅却心頭火自涼」
書き下し文(読み下し文)
「安禅必ずしも山水を須いず。心頭を滅却すれば、火も自ら涼し」
(あんぜん かならずしも さんすいをもちいず。しんとうを めっきゃくすれば、ひもおのずからすずし)」

この句は、中国の6世紀の後梁(こうりょう)の時代の詩人に、杜筍鶴(と じゅんかく)という人がいますが、その詩の「夏日、悟空上人の院に題す」というのが元の句です。
「三伏門を閉ざして、一納を披す。
兼ねて松竹の房廊を蔭う無し。
安禅必ずしも山水を須いず、
心頭を滅却すれば、火も自ら涼し。」
<意訳>
夏の暑いまっさかりに、悟空上人という方は相変わらず一枚の破れ衣をキチンと身に着けて坐禅をしておられます。しかも炎熱を避ける一株の松も一本の竹もない、まったくの炎天下と同様です。この方を見ていると、坐禅をするのに静かな山中か水辺に居を求める必要はなさそうです。上人のように心頭を滅却し寒熱を超越された方は、暑さに心を煩わされることもなく、炎熱もまた楽しといった様子です。

この後半部分を快川紹喜和尚は用いたのです。
「心頭」とは、物事にこだわる分別執着の頭での考え、心での思いのことで、すなわち煩悩のことです。「滅却」とは、その心に煩わされたり、乱されたりすることを断ち切ることです。すなわち、分別執着心を断ち切って無心に徹すれば、雑音も熱さも無関係です。自分を焼き尽くす猛火の熱さ、恐ろしさに、振りまわされない自分をしっかりと確立しさえすれば、「火も自ずから涼し」ということになるのです。火は熱いものです。熱さに変わりありません。しかし、熱さをそのままに熱さとして受け取る静かな澄みきった境地を、「涼し」と表現しているのです。ものすごい極地、境地に達する言葉ですが、まさにこの境地を目指さないと煩悩は消えないですね。欲望の誘惑は、私の生涯の自戒とするところです。

【肉欲】
異性の肉体を求める性的欲望。性欲。情欲。「―におぼれる」
【煩悩】
仏教で、心身を悩まし、乱し、煩わせ、惑わし、汚す心の作用のこと。人間の苦の原因とされる。煩悩の根源は貪(とん)・瞋(しん)・痴の三惑で、それに慢・疑・悪見の三つを加えて根本煩悩ともいう。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。