ミサの祭器・祭具:その8「聖櫃(せいひつ)」と「ご聖体(ホスチア)」のお話し [キリスト教関係事項・用語等]

教会、特に聖堂における最高に重要な「聖櫃(せいひつ)」のお話しです。ミサの祭器・祭具ではありませんが、ミサの最中に司祭が聖櫃の扉を開けてご聖体(ホスチア)を取り出し、ミサの終わりの方で聖櫃にご聖体(ホスチア)を納めます。聖櫃とhosutiaは、キリスト教おいて使われる<特別な箱>を指す言葉です。元々は、モーセが神様から授かった「十戒の板(石板2枚)」をエルサレムの神殿内に収めていた黄金の箱のことを指します。この箱は「聖櫃」とも訳されますが、キリスト教においては「契約の箱」と訳されることも多いのです。箱の材料、大きさ、作り方などの規定は、旧約聖書の「出エジプト記」第25章・第10〜第22節に書いてあります。2本の棒で担ぐことやご神体を運ぶという観点では、日本の神社の神事(例祭・大祭)での「御神輿(おみこし)」と似ていますね。

ちなみに、この聖櫃が日本のクリスチャンではない皆さんに広く知られることになったのは、1981年に公開されたアメリカの映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(Raiders of the Lost Ark)ですね。アドベンチャー映画で、『インディ・ジョーンズ シリーズ』の第1作目です。スティーブン・スピルバーグ監督、ハリソン・フォード主演でした。
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◯旧約聖書:出エジプト記・第25章・第10〜第22節
「アカシヤ材で箱を作りなさい。寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマ、高さ一・五アンマ。純金で内側も外側も覆い、周囲に金の飾り縁を作る。四つの金環を鋳造し、それを箱の四隅の脚に、すなわち箱の両側に二つずつ付ける。箱を担ぐために、アカシヤ材で棒を作り、それを金で覆い、箱の両側に付けた環に通す。棒はその環に通したまま抜かずに置く。この箱に、わたしが与える掟の板を納めなさい。次に、贖いの座を純金で作りなさい。寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマとする。打ち出し作りで一対のケルビムを作り、贖いの座の両端、すなわち、一つを一方の端に、もう一つを他の端に付けなさい。一対のケルビムを贖いの座の一部としてその両端に作る。一対のケルビムは顔を贖いの座に向けて向かい合い、翼を広げてそれを覆う。この贖いの座を箱の上に置いて蓋とし、その箱にわたしが与える掟の板を納める。わたしは掟の箱の上の一対のケルビムの間、すなわち贖いの座の上からあなたに臨み、わたしがイスラエルの人々に命じることをことごとくあなたに語る。」
『新共同訳聖書』から

現在のカトリック教会における「聖櫃」とは、ミサで使用する “ キリストの身体に聖変化したパン(ご聖体:ごせいたい)= ホスチア ” を納める箱・容器(写真)のことをいいます。現在では、ご聖体が納められているかどうかを聖櫃の近くに設置した、小さなランプ(通常は赤色)が灯っているかどうかで示しています。聖堂の祭壇にある十字架の近くに設置されています。
木製や金属製の箱型で、壁の中に収納されている場合もあります。聖堂の一番前の祭壇壁側に設置されていますので、聖堂で一人でお祈りする時は、この聖櫃に一番近い場所で聖櫃に向かってお祈りします。これは、イエス・キリストの身体(ご聖体)の納められた箱だからですね。だからといって聖櫃にお祈りするわけではありません。お祈りはご聖体であるイエス様にです。
◯写真は、カトリック相模原教会の聖櫃です。聖堂祭壇の十字架近くの壁にあります。
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◯「ホスチア」(写真)とは、ご聖体(せいたい)のことで、カトリック教会、正教会、東方諸教会などキリスト教諸教派において、ミサや聖体礼儀で食するために “ 特殊なパン ” を聖別し、イエス・キリストの体の実体として信じて食べるものです。聖別によってパンとぶどう酒(赤ワイン)が、キリストの体と血の実体に変化することを聖変化(transubstantiation)と言います。この聖変化がミサの中で行われるのです。
カトリック教会では、ご聖体のパンとしてイースト菌(酵母)を使わない一種のウエハースを用います。これをホスチアと呼びます。市販されておらず、修道院で作って販売していたり、カトリック聖品専門店で販売しています。ホスチアはラテン語で「いけにえ(の供え物)」という意味で、もともとはご聖体として聖別されたパンとぶどう酒を指していましたが、聖別されたパンの方だけをホスチアと呼ぶようになりました。ミサでホスチアと呼ばれるパンを用いるようになったのは12世紀頃からですが、種なしパンの使用は9世紀頃に遡るそうです。
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私は信徒(洗礼を受けた人)ですのでご聖体を拝領できるのですが、まったくウエハースと同じですね、教会によって多少の違いはあるものの、基本的には同じ大きさですが、作る材料が少々違ったりします。ミサでは、ご聖体拝領の時に、信徒も信徒でない人(洗礼を受けていない人)も司祭(神父様)に向かって列に並びます。この場合、信徒はご聖体であるホスチアをいただくのですが、司祭が「キリストの体」と言ってホスチアを信徒の目の前に示します。信徒はそれを両手(左手の掌が上)で受けて「アーメン」と応えて口に入れます。信徒ではない方はご聖体であるホスチアはいただけません。その代わりに司祭から “ 祝福 ” をいただきます。順番が来て、司祭の前で頭を下げると司祭が右手の掌で相手の頭に触れ、司祭によって多少違いがありますが「主(神様)の豊かな恵みと平安がありますように。」と祝福してくれます。とても暖かな気持ちになりますよ。

◯次の記事もお読みください。
・ミサの祭器・祭具:その1「アルバ」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-06-24-3
・ミサの祭器・祭具:その2「アミクトゥス」と「チングルム」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-08-26-2
・ミサの祭器・祭具:その3「カンパヌラ」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-09-09-1
・ミサの祭器・祭具:その4「カリス」お話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-10-06
・ミサの祭器・祭具:その5「パテナ」お話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-10-08
・ミサの祭器・祭具:その6「ローソク」お話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-10-11
・ミサの祭器・祭具:その7「プリフィカトリウム、バラ、コルポラーレ」のお話し 
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-10-13
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