ミサの祭器・祭具:その4「カリス」お話し [キリスト教関係事項・用語等]

「カリス」とは、ミサにおいてぶどう酒を奉納し、聖別、拝領するときに使用する杯(さかずき)のことです。また、飲むために使われるコップのことを指しますが、キリスト者の間では、初めからミサに使われる器として区別して使われてきました。カリスは、ミサの時にイエス・キリストの御血(おんち)を入れる杯ですから、御血が直接触れますので液体を吸収しない材料で作られていることになっています。多くは金属で金又は銀メッキされていますね。
◯写真は、現在一般的に使われている金メッキや銀メッキが施された金属製の「カリス」です。
カリス.jpg
初期の時代は、ガラス製のものも作られましたが、9世紀ごろからは金属で作るようになりました。次第にキリスト教的シンボル(十字架、魚(イクツス)、ブドウの図章)などで装飾されるようになり、宝石や金、銀、メノウなどが装飾として使われるようになっていきました。ルネッサンスやバロック美術の影響を受け、特に中世に作られたカリスは美しく豪華なものが多く残っています(写真下)。まぁ、人間の欲ですな。貧困を愛されたイエス様が、そんな豪華なカリスをどう思われるかです。決してお喜びではないでしょうね。
カリス2.jpg
この「カリス」の中に入れるのは、物理的にぶどう酒ですが、実際には、ミサにおいて司祭(神父様)の唱える奉献文に出てくる聖化された “ イエス・キリストの血 ” です。ミサの中で行われる「聖体の秘蹟」の説明は後日にするとして、ミサの中で奉納祈願と叙唱のあと、司祭(神父様)が次の奉献文(第2奉献文)を唱えます。
「まことに聖なる神、すべての聖性の源である父よ、いま聖霊を注ぎ、この供えものを聖なるものにしてください。(パンとぶどう酒の上に十字のしるしをする)わたしたちのために主イエス・キリストの御(おん)からだと御血(おんち)になりますように。主イエスはすすんで受難に向かう前に、パンを取り、感謝をささげ、裂いて、弟子に与えて仰せになりました。『皆、これを取って食べなさい。これはあなたがたのために渡されるわたしのからだ(である)。』
食事の終わりに同じように杯を取り、感謝をささげ弟子に与えて仰せになりました。『皆、これを受けて飲みなさい。これはわたしの血の杯、あなたがたと多くの人のために流されて、罪の赦しとなる新しい永遠の契約の血(である)。これをわたしの記念として行いなさい』」
このあと、司祭が「信仰の神秘」と唱えると、会衆(信徒)が次のとおり「主よ、あなたの死を告げ知らせ、復活をほめたたえます。再び来られるときまで。」と応唱し、イエスの記念として、イエスが言われたとおりに行なっています。司祭はさらに続け、「聖なる父よ、わたしたちはいま、主イエスの死と復活の記念を行い、み前であなたに奉仕できることを感謝し、いのちのパンと救いの杯をささげます。」と続きます。

この奉献文(第2奉献文)の根拠となっている聖書の箇所は、次のとおり新約聖書の4つの福音書の内、3つの福音書に記載があります。すべてイエス・キリストが磔刑(たっけい:十字架に磔(はりつけ)される死刑)にされる前夜の「最後の晩餐(さいごのばんさん)」の場面の一部です。
◯マタイによる福音書:第26章・第26~第28節
「さて、一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、賛美をささげて、それを裂き、弟子たちに与えて仰せになった、「取って食べなさい。これはわたしの体である」。また杯を取り、感謝をささげ、彼らに与えて仰せになった、「みな、この杯から飲みなさい。これは、罪の赦しのために、多くの人のために流される、わたしの契約の血である。」」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から

◯マルコによる福音書:第14章・第22~第24節
「さて、一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、賛美をささげて、これを裂き、弟子たちに与えて仰せになった、「取りなさい。これはわたしの体である。」また、杯を取り、感謝をささげて、彼らに、お与えになった。彼らはみな、その杯から飲んだ。すると、イエスは仰せになった。彼らはみな、その盃から飲んだ。「これはわたしの血、多くの人のために流される契約の血である。」」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から

◯ルカによる福音書:第22章・第19~第20節
「それから、イエスはパンを取り、感謝をささげて、それを裂き、使徒たちに与えて仰せになった、「これは、あなたがたのために与えられる、わたしの体である。これを、わたしの記念として行いなさい」。食事を終えると、杯も同じようにして仰せになった、「この杯は、あなたがたのために流される、わたしの血による、新しい契約である」」
『原文校訂による口語訳フランシスコ会聖書研究所訳注聖書』から

◯次の記事もお読みください。
・ミサの祭器・祭具:その1「アルバ」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-06-24-3
・ミサの祭器・祭具:その2「アミクトゥス」と「チングルム」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-08-26-2
・ミサの祭器・祭具:その3「カンパヌラ」のお話し
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2023-09-09-1
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