『聖アウグスティヌスの幻視』のお話し [キリスト教と美術]

イタリア、フェラーラの画家であるガロファーロ(1481年~1559年)作の 『聖アウグスティヌスの幻視』(1518年頃)です。イギリス・ロンドン市にあるナショナル・ギャラリーの所蔵です。この絵は、アウグスティヌスが『三位一体論』の執筆中に幻視したことを描いています。
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この絵を説明をしますと、まず、左上に天上界が描かれ、天からは聖家族(聖母マリア様の後ろに聖ヨセフ様、膝の上に幼いイエス・イリスト)と天使達の奏楽隊が地上の様子を見守っています。そして、右側・下部に描かれている地上ですが、『三位一体論』を執筆しているアウグスティヌスの後ろに立っているのは、3世紀ごろの殉教者アレクサンドリアの聖カタリナです。彼女が手にしているナツメヤシの葉(シュロの葉)は殉教者の印で、聖カタリナのアトリビュートになっています。そして、幼児(の姿をしたイエス・キリスト)が砂浜に穴を掘り、柄杓(ひしゃく)で海水を汲み上げています。この絵のテーマである<聖ウグスティヌスの幻視>は、複数の画家によって描かれており、描き方の解釈が、執筆中ではなく散策中であったり、幼児が天使であったりして、描き方に少々違いがあります。

この場面ですが、アウグスティヌスは、幼児(の姿をしたイエス・キリスト)が砂浜に穴を掘り、柄杓(ひしゃく)で海水を汲み上げる姿を目撃し、それが無駄な努力であることを幼児に告げました。すると、幼児は、砂浜に掘られた小さな穴をアウグスティヌスに示し、「あなたが三位一体を理解するよりも、海の水を全部この柄杓で小さな穴に移し替えるほうがまだやさしい」と、人間の知力には限界があることをアウグスティヌスに諭しました。その時、アウスグスティヌスは「三位一体論」の神秘解明が、不可能であることを自覚するのでした。
「アレクサンドリアの聖カタリナ」の詳しいことについては、このブログの2021年11月25日に掲載しました「聖カタリナおとめ殉教者のお話し」をお読みください。
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2021-11-25

キリスト教の考えでは、人間の知性によって神の属性を知ることはできません。中世最大の神学者で哲学者であるトマス・アクィナスも、あるとき幻視を見てから「私が見た物に比べれば、これまでに考え書き記してきたことは塵のようなものだ」と言って、著述をやめてしまいました。アウグスティヌスは死ぬまで書物を書き続けましたが、彼の優れた知性をもってしても、神の属性を知ることはまったく不可能でした。
なお、「三位一体」の詳しい説明については、このブログの2021年5月30日に掲載しました「三位一体の祭日のお話し」をお読みください。
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2021-05-30
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