キリスト教と美術(結び目を解く聖母マリア) [キリスト教と美術]

結び目を解く聖母.jpg

「結び目を解く聖母マリア(「結び目の聖女」或いは「結び目のマリア」)」は、ドイツ最南部のアウクスブルクにある、カトリックの巡礼教会の「ペルラッハの聖ペテロ教会」が所蔵する宗教絵画です。作者は、地元の画家ヨハン・ゲオルク・メルヒオール・シュミットナーです。製作されたのは1700年頃で大きさは182cm×100cmあります。アウクスブルクの聖ペテロ修道院の司祭であった地元貴族出身のヒエロニムス・アンブロシウス・ランゲンマンテルが、「良き助言者の聖母マリア」の祭壇のために依頼したものだそうです。余談ですが、現在の教皇フランシスコが、まだコホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(枢機卿)と名乗っていたころ、特に許可を得て制作し、アルゼンチンに持ち帰った複製画は、現地で崇敬を集めているそうです。

この絵ですが、よく見ると、悪魔の象徴である蛇の頭部を足で押さえながら、白く長いリボンの結び目を解いている黙示の日の聖母が描かれています。聖母は12人の小天使と2人の大天使、7つの六芒星からなる輪に囲まれています。 聖母の頭上には聖霊が鳩の姿で降臨し、彼女が聖霊の花嫁であることを暗示しているところを画いているそうです。新約聖書の「ヨハネの黙示録」に記されていますが、聖母は太陽を纏っています。
①新約聖書:ヨハネの黙示録・第12章・第1節
「また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。」

三日月の下にかなり小さく天使、人間と犬が描かれていますが、これは旧約聖書の「トビト記」に記載のある、大天使ラファエルがニネベのトビアにエクタバナのサラを娶るよう促し、仲人として共に旅をするシーンであると解釈されているそうです。
②旧約聖書:トビト記・第5章・第17節
「それから彼が息子トビアを呼んで、言った「わが子よ、旅の支度をし、同族のこの人と出かけなさい。天の神が、かの地でお前たちを守り、無事にわたしのもとに戻してくださるように。わが子よ、神の使いが道道お前たちと共に歩み、無事に旅をさせてくださるように、」トビアは旅路につくため家を出て、父と母に口づけした。トビトは言った「元気で行ってきなさい。」」

上記の聖書に基づく2つ(①と②)の図案、そして「良き助言者の聖母」の祭壇に捧げられていることには、別の意味もあるそうです。それはこの絵を寄進したランゲンマンテルの家族の身に起きた出来事に由来しています。
彼の祖父ヴォルフガング・ランゲンマンテル(1586-1637)は、妻ソフィア・レンツ(1590-1649)との離婚の危機に瀕したとき、インゴルシュタットのイエズス会士ヤーコプ・レム司祭を訪ねました。絵の中で旅人が右手を挙げた天使に導かれるがごとく、遠くの教会を目指したのです。レム司祭はマリア像に祈りを捧げ、「この祈りにより、結婚の絆が深まり、結び目を解くように2人の間の問題が解決されますように。」と取りなしを願いました。すると、彼らの離婚の危機は去り、その仲は平穏なものとなったそうです。後に聖職に就いたランゲンマンテルは、そのことを記念するために絵の中に織り込んだのですね。

これらのことから、聖母マリアは2人の旅人のように「結び目のように複雑で困難な問題」に助けを与えるものだと解釈されています。すなわち、聖母は人生の伴侶を見つけること、そして結婚生活における問題を解決することの助けを与えるものと解釈され、乳がんを患う女性に対する理解と支援を促すシンボルとしても結び目(ピンクリボン)が用いられています。

認定NPO法人J.POSH日本乳がんピンクリボン運動
ピンクリボン.jpg

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