「情けは人のためならず」のお話し [今日の言葉(ことわざ)]

丁度一年前ごろのお話しです。
仕事が終わって帰宅する電車で座っていたら、目の前に立っていた二人が、次の言葉の意味について議論し始めました。議論となった言葉は「情けは人のためならず」です。私は知っているつもりだったのですが、聴いていて自信がなくなり、不安になって家に着いてから辞書で調べました………とりあえず正解でした!( ̄▽ ̄;)

案外と意味を間違っている人が多い言葉に、「情けは人のためならず」があります。本来の意味は、「人に思いやりを掛けておけば、結果として、いつか自分にも良い報いが訪れる。」という意味の言葉です。決して「人に情をかけると、その人のためにならない。」ということではありません………ということで、「情けは人のためならず」を辞書で調べました!
◯『日本国語大辞典 第2版(小学館)』
【情けは人(ひと)の為(ため)ならず】
情をかけておけば,それがめぐりめぐってまた自分にもよい報いが来る。人に親切にしておけば必ずよい報いがある。(補注:情をかけることは,かえってその人のためにならないと解するのは誤り。)
◯『大辞林 第3版(三省堂)』
【情けは人の為(ため)ならず】
情を人にかけておけば,巡り巡って自分によい報いが来るということ。(近年,誤って本人の自立のために良くないと理解されることがある。)

ここに掲載した2つの辞書では、両方とも「人に情をかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来る。」を意味としています。そして、「誰かに情を掛けることは,その人のためにならない」という解釈が誤りであることを指摘しています。この言葉を本来とは違う意味で理解してしまうのは,「ためならず」の解釈を誤ってしまうからだと考えられます。
もし「情けは人のためにならず」のように、「ために」の「に」が入っているというのであれば、「その人のためにならない」と受け取れるでしょう。しかし、「人のためならず」の「ならず」は、断定の「なり」+打ち消しの「ず」ですから、「である+ない=~でない」という意味になり、「人のためでない(=自分のためである)」と読み取る必要があります。ここのところがはっきりしないことが「人のためにならない」と解釈する人がいる理由だと思います。

この言葉について、いろいろ調べていたら、実はこの「情けは人のためならず」は、新渡戸稲造(にとべいなぞう)博士が作った詩の一部分でした。新渡戸博士が書いた大正4年発売の『一日一言』に書かれているそうです。人生に役立つ言葉が366日(一年)分書いてあり、しかも、言葉が分かりやすくて読みやすいそうです。是非読んでみようと思います。では、この『一日一言』の「4月23日“恩を施しては忘れよ”」を全文を読んでみましょう。
「施せし情は人の為ならず おのがこゝろの慰めと知れ 我れ人にかけし恵は忘れても ひとの恩をば長く忘るな」
意味は、「情けは他人のためではなく自分自身のためにかけるものだ。だから自分が他人にした良いことは忘れてもいい。でも、人から良くしてもらったことは絶対に忘れてはいけない。」という意味ですね。
今読める本は、次のとおりです!
『新訳 一日一言 「武士道」を貫いて生きるための366の格言集』
著者:新渡戸稲造
出版:PHP研究所
定価:880円(税込)

ところで、この「情けは人のためならず」は、キリスト教では何というか?を聖書を調べてみました。そうしたら、新約聖書の『ルカによる福音書』の第6章・第38節に「与えなさい。そうすれば、あなた方にも与えられる。」がありました。これはイエス・キリストの聖句(イエス様の言葉)です。この聖句が一番近いと思います。仏教では、「因果応報(いんがおうほう)」ですね。「善い行いをすれば、良い報いがある。」ということです。ただし、因果応報には、「悪い行いをすれば、悪い報いがある。」という意味もあります(⌒-⌒; )
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