「装飾写本ハガキ」と『グーテンベルク42行聖書』のお話し [キリスト教と美術]

写真は、上野公園内にある国立西洋美術館で開催されている「憬の地 ブルターニュ展」を観に行かれた方からのお土産です。これは中世ヨーロッパのラテン語聖書・祈祷書から採った「彩飾写本ハガキ」ですね。装飾写本とも彩飾写本とも言います。
私がクリスチャンだからということでのお土産でした。国立西洋美術館で、2019年から2020年にかけて開催した「内藤コレクション写本展」で、展示された中から代表的な写本を国立西洋美術館が10種類の絵はがきのセットにしたものだそうです。
信徒でない方は、あまり興味がわかないかもしれませんし、このハガキでお便りをもらっても「これは何だろう?」とお思いになるでしょう。でもクリスチャンであれば、ヨーロッパの古い聖書や祈祷書にある装飾画や彩飾意匠であると気づきますね。
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………ということで、次に装飾写本に関係して、その装飾が施されている『グーテンベルク42行聖書(マルティン・ルターのドイツ語訳聖書)』のお話しをします。以前、このブログに掲載した記事を一部修正して再掲載いたします。写真は、私の自室に飾ってあるグーテンベルクの印刷機によって印刷した、マルティン・ルターの『ドイツ語訳42行聖書』の一葉です。もちろんレプリカです。
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宗教改革で有名なドイツのマルティン・ルターは、ザクセン選帝侯フリードリヒにかくまわれ、ヴァルトブルク城にいた時に新約聖書のドイツ語訳を完成し、1522年に印刷してドイツの民衆に広がりました。ルターは、ラテン語とギリシア語の原典から、当時のドイツの各地方の方言を取り入れながら翻訳しました。
◯『グーテンベルク42行聖書』のレプリカです。本物は、製作する時に最初に文字を印刷機で印刷し、刷り上がった紙面に装飾(彩飾)職人が筆を使って書き上げたそうです。
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この新約聖書は、15世紀にグーテンベルクによって改良された活版印刷機によって印刷されて広く普及して、宗教改革の民衆への広がりの一因となったそうです。また、このルター訳の聖書が普及することで、近代ドイツ語の統一が図られたとも言われています。この聖書の効果・影響は大きいものがあったのですね。
それまでは、ほとんどがラテン語の聖書でしたので、聖職者と一部の知識人しか聖書を読むことができませんでした。一般民衆はラテン語を読むことができないため、教会で聖書の朗読を聴くだけでした。余談ですが、このグーテンベルグによって印刷された『グーテンベルク42行聖書」』は、現在世界に48冊しかありません。その内の1冊は日本にあり、慶應義塾大学図書館に保管されています。

ルターのドイツ語訳新約聖書は、1522年9月21日に印刷を完了し、直ちに市場に販布されました。翻訳者、印刷者、出版者の名もなく、年月も記されずただ下方にヴィッテンベルクと市名が記されているだけでしたが、時が9月だったので、「9月聖書」と呼ばれました。定価は1グルテン半で、当時としては高価でしたが、大いに歓迎さて売り尽くし、すでに12月には再版が出ました。すごい!
その後もほぼ毎年、新版が印刷され、ルターの生存中に22版を重ねたそうです。なお、ルターは新約聖書のみならず、旧約聖書のドイツ語訳にも着手し、1532年には全部を訳し終え完成出版することができたそうです。
(マルティン・ルター/石原謙訳「キリスト者の自由・聖書への序言」岩波文庫から引用しました。)
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