新約聖書:マルコによる福音書・第1章・第40〜第45節 [聖書]

「さて、一人の重い皮膚病を患っている人が、イエスのもとに来てひざまずき、こう願った。「お望みなら、わたしを清くすることがおできになります」。イエスは憐れに思い、手を差し伸べて、その人に触り、「わたしは望む、清くなれ」と仰せになった。すると、たちまち、重い皮膚病は治り、その人は清くなった。イエスはその人をきびしく戒め、すぐに立ち去らせたが、その時、こう仰せになった。「誰にも話さないように注意しなさい。ただ祭司のもとに行って、体を見せ、あなたが清められたことを人々に証しするために、モーセが命じた物をささげなさい」。しかし、その人は立ち去ると、盛んにこの出来事を語り、言いふらし始めた。それで、イエスはもう公然と町にお入りにならず、人里離れた所に留まれだが、至る所から、人々はイエスのところにやって来た。」

このブログの2019年2月23日に掲載した記事を大幅に加筆・修正して掲載いたします。約半年前に掲載したばかりですが、先月のミサで朗読され、神父様の説教を印象深く聴きましたので、再度掲載したしだいです。この聖句は、新約聖書にある有名な箇所で、イエス・キリストが、宣教のためにガリラヤ地方の町々を巡っておられた時のお話しとなっております。
「重い皮膚病」とは、「ハンセン病」のことを指しています。ライ菌によって起こる感染症のことですが、現代医学では完治する病気です。当時は罪深い者、神様から呪われた者、宗教的に穢れた者とされていましたので、神様の在所である神殿などに近づくことが禁じられていたばかりでなく、村八分となって人里離れたところに住まなければなりませんでした。
そして、首から鈴をさげて、“チリンチリン”と鳴らし、人の気配がすれば「穢れた者です。近寄らないでください。」と叫ばなければなりませんでした。それは、重い皮膚病者に触れた人は穢れた人として村八分にされるからです。そうした悲惨な境遇に置かれていた重い皮膚病者が、救いを求めて密かにイエス・キリストのところにやってきました。そしてイエス・キリストの前にひざまずいて言いました、「お望みなら、わたしを清くすることがおできになります。」と。
この、重い皮膚病者の純粋で素直な信仰心と必死の祈り(願い)が、イエス・キリストの心を打ったのです。当時「触れれば穢れるから絶対に触れるな」という律法の戒めを破り、この男のからだに触れて「わたしは望む、潔くなれ。」と命ずると、不治の病である重い皮膚病が一瞬のうちに癒されました。私もこの重い皮膚病者のような信仰心でありたいものです。

クリスチャン詩人である八木重吉は、この聖句を詩にしています。
『奇蹟』
「らい病の男が
キリストのところへ来ておがんでいる
旦那(だんな)
おめえ様が癒してやってくれべいとせえ思やあ
わしの病気やすぐ癒りまさあ
旦那 なおしておくんなせい
拝むから旦那 
癒してやっておくんなせい
キリストは悲しいお顔をなさった
そしてその男のからだにさわって
よし さあ潔くなれ
とお言いになると
見てるまにらい病が癒った」

【八木重吉(やぎ じゅうきち)】
私が尊敬するクリスチャン詩人です。
八木重吉2.jpg
八木重吉(1898年~1927年)は、詩人、英語科教師でプロテスタント教会のクリスチャンです。生前に刊行した詩集は1冊のみで、昭和初期に若くして亡くなりましたが、第二次世界大戦(太平洋戦争)後にクリスチャン詩人としての評価が高まりました。当時は不治の病であった結核を28才で発病し、翌年29才の若さで早世しています。祈りの詩人、信仰の詩人ともいわれ、短い生涯でしたが数多くの詩を残しています。皆さんは、きっと小学生か中学生の時に、国語の教科書で八木重吉氏の詩と出会ってますね。
生家と家族のお墓は、私の自宅のある東京都町田市相原町にあり、現在の生家は「八木重吉記念館」として一般の皆さんに開館しており、貴重な資料を展示しています。八木重吉の詩は短い詩が多く、単純な分かりやすい言葉で純粋な抒情詩になっているのですが、どの詩も侘びしさがあり、そこに人間の儚い美しさがあると思うのです。読む人の胸に、何かキューと締め付けるような、何とも言えない儚さがあり、キリスト教の信仰による詩も数多くあります。詩集「秋の瞳」や「貧しき信徒」などが有名ですね。
『八木重吉全詩集1秋の瞳・詩稿1・2』
『八木重吉全詩集2貧しき信徒・詩稿3』
(株)筑摩書房:ちくま文庫(文庫版)・1988年第1刷発行
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◯「八木重吉記念館」
住所は、東京都町田市相原町4473番地です。詳細は、ホームページ:https://www.jukichi-yagi.org/
をご覧ください。
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