「蟻の街」のお話し・第四話『蟻の街の子供たち』のご紹介 [キリスト教と読書]

今日は、「蟻の街」のお話し・第四話として、『蟻の街の子供たち』のご紹介です。
まず、この記事をお読みになる前に、この本の中心人物である北原怜子さんのことを知るため、このブログの2022年年4月23日に掲載した「「蟻の街」のお話し・第一話「尊者エリザベト・マリア北原怜子」のことば」をお読みください。
https://jesus195876.blog.ss-blog.jp/2022-04-23
30年前、東京・隅田川の畔で貧しい子どもたちに青春を捧げた〈蟻の街のマリア・北原怜子〉のメモワール。
「何故に本書が世間によって待望されているのであろうか。それは現代社会の中に、漠然としてはいるが宗教的なもの、信仰にもとづく愛への飢渇が存在することの証左である。本書の出版の早きを望むために印刷職工の諸君が特別に精を出したという事実は、愛のプリズムを通じて観察された事実の迫力以外にはないのである。」(「序文」より)」
上記の序文を書いているのは、カトリック教会信徒の田中耕太郎(1890年〜1974年)氏です。
田中耕太郎氏は、法学者、法哲学者で法学博士です。東京帝国大学法学部長、第1次吉田内閣文部大臣、第2代最高裁判所長官、国際司法裁判所判事、日本学士院会員。日本法哲学会初代会長などを歴任され、文化勲章、勲一等旭日桐花大綬章を受章されています。また、大勲位菊花大綬章を没後に叙勲され、正二位を追贈されています。
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私は、この文庫本を読んでいて、涙が出るのを抑えかねました。決して一時的な悲哀感に同情するような、安っぽい涙ではありません。同じカトリック教会の信徒として、私がやっているホームレス支援活動などとは、まったく比べものにならない純粋な弱者救済の志が、若くして病に倒れた北原怜子さんにはあったのです。この世に生を受けた人間として、この世の中をいかに生きるかを教えてくれます。この文庫本は、是非とも皆さんにお読みいただきたいと思います。
著者:北原怜子(きたはら さとこ)
出版:聖母の騎士社
発行:文庫版・2018年第8刷(第1刷は1989年)
単行本は1953年に三笠書房から刊行しています。
定価:500円(税別)

【蟻の街】
戦後直後、復員軍人(ということですが未確認)の小澤求氏が、仕事のない人々を日雇いで雇いあげ、ガラスくず、鉄・銅くず、縄くず、紙くず等を拾い集め、回収させて再生工場へ送る仕事を行うため、廃品の仕切り場とするために隅田公園辺りの製材工場跡と約600坪の土地を借り受けました。このような労働者たちを当時「バタヤ」と呼びました。このバタヤが収集して来た物品の買い取り価格が低いため、バタヤの生活は貧しく苦しかったのですが、自前の仕切り場を開設し、バタヤたちに適切な報酬を支払うことを目指しました。小澤氏の仕切り場での報酬は出来高払いで、仕切り場の労働者とその家族たちを居住させ、仕切り場はいわば生活共同体となりました。人々はアリのように勤勉に働き、助け合って生活したことから、この共同体の名称が「蟻の会」となり、住んでいる場所を「蟻の街」と呼ぶようになりました。

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