『ハッパノミクス―麻薬カルテルの経済学―』のご紹介 [日記]

コロナ渦にあって不要不急の外出は避け、私の標語「コロナに感染しない。感染させない。」をモットーに、2月から集中した読書生活を継続中ですが、新しいジャンルの本を読もうと、以前に観た映画『ボーダーライン(アメリカの対メキシコ麻薬戦争を描いた映画)』に関係する本を読もうと思い、<積読>の中にあった①『エクソダス―アメリカ国境の狂気と祈り―』を読み、それに関係する②『マラス―暴力に支配される少年たち―』を読み、根本的にメキシコにおける麻薬戦争とはどういうものなのか?その全体像を把握するため、③『メキシコ麻薬戦争― アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱―』を読み、より最新情報を知ろうと④『マフィア国家―メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々―』を読ました。そして、しばらく日本における「貧困問題」関係の本を読み始めたのですが、また、麻薬戦争関係に戻ってメキシコ麻薬戦争を経済学という観点から書いている本書を読み終わったところです。
5B6E8EFC-8189-4CCF-9028-DE9D193573A1.jpeg
この本の内容は、出版社のみすず書房のホームページに書かれている本書の案内文を引用させていただくと、「ラテンアメリカを訪れた私は、麻薬産業の恐ろしい供給面を目撃することになった。そして、麻薬密売について書けば書くほど、麻薬ビジネスが組織的なグローバル・ビジネスと酷似していることに気づきはじめた…蒸し暑い独房で一味の支配する縄張りの広さを私に自慢したエルサルバドルの極悪ギャングのボスは、まるで合併を発表するCEOのような口ぶりで、抗争中のギャング間の手打ちについて陳腐な台詞を並べた。コカを栽培するボリビアの無骨な農民は、まるで商業園芸家のような自負と専門知識をひけらかしながら、自身の植物について興奮気味に話した。…世界じゅうの麻薬産業を調べるにつけ、麻薬ビジネスを一般企業と同列に論じたらいったいどうなるだろうかと、ますます興味が湧いてきた。その集大成がこの本というわけだ」「麻薬カルテルの運営を理解すれば、麻薬カルテルが繰り出す次の一手を予測し、税金や人命を無駄にすることなく企みを阻止しやすくなる。本書は麻薬王向けのビジネス・マニュアルであると同時に、彼らに勝つための攻略マニュアルでもあるのだ」(本文より)地を這う取材と最新の学術成果を結び付け、麻薬取引を、経済学的、経営学的に分析した初のノンフィクション。」ということです。
確かにデータや調査資料に基づき、経済的な観点から書かれていますので、なかなか説得力があります。その説得力がある分、悲惨さも増して伝わってきます。しかし、麻薬カルテルと行政機関や警察機関との癒着がなくならない限り、なにをやっても中米地域における麻薬戦争はなくならないでしょうね。

書名:『ハッパノミクス―麻薬カルテルの経済学―』
著者:トム・ウェインライト
『エコノミスト』誌エディター(イギリス)。以前は同誌のレポーターをメキシコシティで務め、メキシコ、中米、および米国国境周辺地域を担当。『タイムズ』『ガーディアン』『リテラリー・レビュー』にも寄稿している。オックスフォード大学で哲学、政治、経済学を修めた。本書が初の著作。
訳者:千葉 敏生(チバ トシオ)
翻訳家。訳書 バーネット他『LIFE DESIGN』(早川書房、2017)タレブ『反脆弱性』(ダイヤモンド社、2017)サンプター『サッカーマティクス』(光文社、2017)ほか。
出版:みすず書房
発行:2017年12月8日
定価:2,800円(税別)

◯目次
Introduction カルテル株式会社
Chapter 1 コカインのサプライ・チェーン——ゴキブリ効果と3万パーセントの値上がり
Chapter 2 競争か、協力か——「殺し合う」よりも「手を組む」ほうが勝るワケ
Chapter 3 麻薬カルテルの人材問題——ジェームズ・ボンドがミスター・ビーンと出会うとき
Chapter 4 PRとシナロアの広告マン——なぜカルテルは「企業の社会的責任」を重視するのか
Chapter 5 オフショアリング——ジャングルでビジネスを行なうメリット
Chapter 6 フランチャイズの未来——ギャングはマクドナルドから何を盗んだか
Chapter 7 法律の先を行くイノベーション——“脱法ドラッグ”業界の研究開発事情
Chapter 8 オンライン化する麻薬販売——ネット・ショッピングが向上させた売人の顧客サービス
Chapter 9 多角化するカルテル・ビジネス——麻薬の密輸から人間の密輸へ
Chapter 10 いたちごっこの果てに……——麻薬王たちを脅かす合法化の波
Conclusion 経済学者は最高の警官
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。